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2022年8月23日 (火)

もし、人生に「IF」があったなら・・・

 半年近くずっと自宅に閉じこもって、自伝「越中源氏-女たちの深き欲望」を書いている。75年も生きていれば、いろんなことがある。ボクの場合、特に女性に大きく左右されている。大学卒業前後、若くて、無名で、貧しい「夢追い人」は、女性に助けられ、映画を連作できた。とりわけ、第二作『みやこ』は「全共闘-解放の女神」恵子の存在、資金援助なくては完成まで漕ぎ着けれなかった。

 恵子は抜群の美女で、大学に入る前まで、学年誌の表紙モデルをやっていたほどである。でも、その「冒険」も母が反対し、途中で辞めている。
 中高一貫制の吉祥女子学園を出てから、早稲田文学部を2回受け、2回とも落ちている。1回目はボクも受験しているので、競争相手だったようだ。毎年、吉祥女子学園から100名前後、早大に受かっているから、どうも恵子は試験が苦手なようだ。
 第二志望の中大文学部へ潜り込んだ恵子がまずやったことは学生運動に参加することだった。68年10月21日、「国際反戦DAY」では、丸太ん棒をもって、防衛庁(現在は省)正門へ突っ込んだ。恵子の父が幹部をしている所である。父への反発が当然あった。待ち構えていた機動隊の放水車に冷水を浴び、そのうち着ているものが剥ぎ取られても、最前線で一年生が踏ん張っている。フランス革命を記念した絵画に出ている様な半裸の美女がみんなを率い、突入しょうととしたところで、政府が戒厳令を出し、恵子は最初に逮捕されている。

 いざ逮捕されて警察に連行され、取調官がまず驚いたのは恵子の父の職業であった。二番目は生傷だらけだった恵子の容姿にまた目を見張った。美しい。
 恵子は付き合っていた時、全共闘、特に小菅拘置所の話はあまりしたがらなかった。もう、学生運動は終わったことだった。代わりにのめりこんだのは「宝石」だった。学生の頃から宝石商見習いをやり、確実にお得意を増やしていった。ボクへの資金援助も宝石商で稼いだお金である。宝石とともに力を入れたのが、詩誌を出すことだった。恵子は実は詩人でもあったのだ。
 詩誌販売の相談で初めて会ったのだが、初め、ボクは気が乗らなかった。中大生のイメージは、六法全書を分厚い眼鏡で、一生懸命読み込んでいる「ガリ勉」であって、恵子もその延長か、と怖気を感じていた。それが、それが生まれて初めて見るような美女だったのだ。
 こちらが上がって、ついつい電話番号を聞きそびれてしまった。ブサメンのボクにとって、恵子は「天上の華」だった。どう連絡していいのか、判らず、一人下宿で悶々としていたところに、恵子から電話があった。うれしい。

 結局、電話をしている間に、二人で年末に京都に行こうという話になった。会って2度目に祇園のホテルで合体。結婚しょうと言う話になった。3月に沖縄で新作のロケが始まる。級友の赤岩が撮影を担当してくれることも決まっていた。ここで、ボクが映画の話をキャンセルし、話が来ていた多摩芸術学園(現 多摩美術大学に吸収)助手の話を受けていれば、大学を出たばかりの恵子と3月に結婚できたのだが…。
 しかし、ボクは恵子ではなく、沖縄で新作を取ることを選んだ。せめて、撮影が終わるまで、恵子はボクを待ってくれるものだ、という予定だったが。確かに一月は毎日のように手紙が来た。しかし、4月に入ってからぴったりと来なくなった。沖縄から電話しても、電話音が空しく鳴り響くだけ。そして、5月に入ってから、婚約破棄の手紙がロケ地、宮古諸島・水納島に配達された。

 何のためにペアの婚約指輪をわざわざ作らせたのだ!
 1か月しか、恵子は持たなかった。常に甘え、拗ね、泣く相手がいないと、恵子は不安になるのだ。あれほど狂ったようにボクを求め、痴態を晒した恵子だが、やはりボクの不在は決定的だったようだ。

 人生に「IF」は禁句である。しかし、恵子のことを時たま思い出すと、沖縄に行かず、多摩美術大でブニュエルやケン・ラッセル、それにベルギーの美術監督アンリ・ストルクを学生たちに教えていた方が良かったかな、とも思う。
 軽井沢で結婚式を挙げ、阿佐ヶ谷の善福寺公園近くの小洒落たアパートで恵子と暮らしていた方が幸せだったかも…。

 恵子とは結婚できなかったが、これほどの美女-北川景子にウリ二つーに狂ったように惚れられ、「男冥利」に尽きる。


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コメント

はじめまして。最近、『東京都セレブ区福祉部』を読みましたが、恵子さんとご結婚されていたらこの作品も世にでなかったのではないかと思います。
いや、杉並区版がでたかな。

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